不動産情報
マンハッタン不動産市場動向(2010年度上半期~7月)
【オフィス市場】
*「s.f.」はスクウェーア・フィートの表示でございます。(坪:約35.58s.f.、100s.f.:約2.81坪目安です。)
ニューヨーク市の失業率の上昇は7月に9.4%なり、全米9.5%に対して反転いたしました。(詳細は【経済情報】を御参照下さい。)引き続きウォール街関係の解雇はございますが、リーマン・ショックより丸2年が経過し、約184,000人分失われた雇用が、約70,000人分回復した状況でございます。市の経済の回復は全米の状況とはかなり異なる状況で進捗し、全米主要20都市との比較を含め、独立独歩の様相でございます。
オフィスの賃貸借市場につきましても、最大規模の市場ではございますが、ここ数カ月は連続空室が下落し、全米の中で最も早い回復の状況を示しております。最近の全米空室率(全米平均:約14.8%)の低さトップ3は、なんとミッドタウン・サウス地区(約9.3%)、ダウンタウン地区(約9.9%)、ミッドタウン地区(約11.5%)といずれもマンハッタン島内の地区ございます。募集賃料の上昇への反転は見られないものの、ミッドタウン地区ではサブリース市場はかなり減少し、地主のフリーレント期間も減少、内装費負担の減少等にて、すでに底打ちし反転したと一部の大手仲介業は囁いております。
<市の不景気の歴史>
ボストンの大学が調査の上、発表致しましたが、リーマン・ショックの震源はマンハッタンではありましたが、近年では90年代前半(プラザ合意後の80年代後半のバブル崩壊)、2000年代前半(第一次ITバブル崩壊)がございましたが、戦後の景気後退の中では最も緩かった、つまりソフトであったのが、皮肉にも今回のリセッションであったとの報告がございました。そして、全米の中でニューヨークが唯一回復基調であることの減少は、70年代後半から80年代前半の不景気時の減少に類似していると言われ始めております。
(当時の雇用数に対する失業者の比率は、全米が約3%であったのに対して、ニューヨーク市は約1%でした。)
投資動向に関わります売買は、上半期のみで昨年1年分の取引金額:約$4,200百万(85円換算:約3,570憶円)を上回る結果(約$5,200百万)になりました。その内のオフィスの売買の比率は約46%でございます。昨年の一年と通しての比率は約47%でしたので、大きくは変化しておりません。アパート物件の比率は昨年の約17%から約21%に上昇致しました。開発物件の比率は5%から10%と倍増しております。
【店舗賃貸市場(道路沿いの1階中心)】
先月入りました速報によりますと、5番街の42丁目~59丁目の平均賃料は再び世界一の店舗賃料に返り咲いたようでございます。平均募集賃料は約1,650/s.f.(85円換算、約415,841円/坪)、特に49丁目~59丁目は突出しており約2,200/s.f.(85円換算、約554,455円/坪)です。
マンハッタンの全体平均募集賃料は、2008年の秋以降約11%下落し約$115/s.f.との報告がございました。世界の店舗の中心であるため、市場が下落している間に世界中からのマンハッタン新規進出を考えている会社が動き出しております。
ミッドタウンの西側の9番街の賃料は約2年前の約$130から現在$180以上まで上昇しているとの報告がございました。ここ数年の周辺の住宅開発にて中級所得層が移住してきており、その所得に合わせてファースト・フードからレストランに1階店舗が変化している典型的なマンハッタンの地域再開発の現象と考えられます。
地区別あるいは主要な通り別の募集賃料状況は、以下の通りでございます。
<地区別>*単位は前述のように「s.f.」にて年額表示になります。
- 1.ミッド・タウン:約$152(約-6%)
- 2.アッパー・イースト・サイド:約$168(約-12%)
- 3.アッパー・ウエスト・サイド:約$116(約-22%)
- 4.ミッド・タウン・サウス:約$96(約-14%)
- 5.ダウン・タウン:約$95(約-13%)
- 6.アッパー・マンハッタン:約$52(約-13%)
*最新の8月の情報から、詳細にはタイムズ・スクエアー、ミート・パッキング、ソーホー地区は、年初より約7%下落のとの報告です。
<主要通り別>
1.マジソン街(57丁目~72丁目):約-30%(年初より),(平均募集賃料$829:約24万5千円/月額・坪),72丁目以北は$500:約14万8千/月額・坪と魅了的な賃料になってます。)*8月上旬発表。
2.ブロード・ウェー(アッパー・ウエスト・サイド:72丁目~86丁目):約-5%,($236~$325:約9万6千円/月額・坪)
3.5番街(49丁目~59丁目):約-3%, ($1,200~$2,200:約65万円/月額・坪)
4.5番街(42丁目~49丁目):約-20%,(平均募集賃料$574:約17万/月額・坪)
4.5番街:約0%,14丁目~23丁目($200~$400:約11万8千円/月額・坪)
5.ブロード・ウェー(ソーホー地区):平均値は約0%ですが、最上値は約-32%
($333~$550:約16万3千円)
6.7番街(ウエスト・ビレッジ地区):平均値は約0%ですが、最上値は約-16%
($393~$667:約19万7千円)
【マンハッタンの住宅市場】
マンハッタンの住宅市場の70%を占めます賃貸市場(賃貸物件戸数は約250万戸。)は昨年11月より空室率が2%を切り、その後下落し続けております。5月1%を切った後も3ヶ月連続下がっております。7月には0.88%(過去3年内では最も低い。)になりました。2009年中の賃料下落率は約4%、平均月額賃料:$3,789でした。毎年6月~8月は9月の新学期を迎えるため、年中を通して賃貸市場が最も活発になる時期です。まだ賃料の上昇の現象は顕著には見られませんでしたが、その方向に向かっていることは確かと考えます。
7月の速報では、ワンルームの平均月額賃料:$1,818、1ベッドルームは$2,492とそれぞれ6月から変化はございませんでした。但し、市場の在庫は減少し始めております、7月は93戸減にて総在庫戸数は9,032戸でした。これから秋・冬と賃貸市場が徐々に冷え込みます、この時期にどのような結果がでるのかが、来年の4月以降の賃料上昇に大きく影響すると考えられます。
市の人口は2000年以降、10年間に50万人(2000年に市の史上初めて800万人越えを記録しました。)の増加が予測されていますが、その急速な人口流入が低い空室率を持続させていると言えます。3月に実施されました国税調査の結果も楽しみですが、景気回復が独立独歩のニューヨーク市にさらに職を求めて全米各地から流入する可能性がございます。
益々賃貸市場への影響が考えられます。
売買市場(主にコンドミニアムとコープ)は第2四半期に過去2年では最高の2,756戸と昨年第4四半期以降大きく回復しております。売買単価は0.5%下落しましたが、$1,050/s.f.と$1,000台を確保しております。中間価格も$899,000と対前年同期比にて7.6%の上昇となりました。特に大型の住戸につきましては、この時期に購入が集中しており、対前年同期比にて約41%の増加となっております。市場全体の平均価格は7月時点にて、対前年同期比にて7.6%の上昇と報告されております。
【全米の戸建て市場】
S&P Case-Shiller National Home Price Index(全米住宅市場の75%を含む。)の全米20都市住宅価格指数によりますと、昨年12月も0.3%上昇し、昨年5月に34ヶ月振りに上昇に転じてから7ヶ月連続上昇したことになります。当初の予想ですと、冬のホリデー・シーズンと政府の住宅取得減税の効果の一般化による購買意欲の減少等により下落すると考えられていました。
サブプライム・ローンの大きな要因でした西海岸のロス・アンジェルス、フェニックス、サン・ディエゴが12月の上昇に影響したようです。ラスベガスも僅かな光が差したようですが、全米で最も下落が激しい都市であることは変わりません。
20都市の指数は2009年一年を通して約3.1%下落しました、通して2桁の下落をしたのはラスベガス、デトロイト、フロリダのタンパでした。
1月の既存戸建ての取引件数は、対前月比+10.1%の大幅な上昇を見せ、ここ過去2年間では最高の伸び率でした。新築につきましては、1月の取引件数は当初の予想は+3.5%でしたが、年換算:約30,900戸となり対前月比‐11.2%と1963年の記録開始より最も低い水準となり、昨年の11月より3ヶ月連続の取引年換算件数の下落となりました。
その中間価格も昨年11月には一旦+1.9%にて約23万ドルは回復しましたが、12月‐1.6%に引き続き1月‐5.6%と大幅に下落し約20万ドル台前半の水準に戻りました。
【アパート投資】
アパート物件への投資は、上半期にて昨年一年分以上の取引額に達しており、特にハーレム以北の取引増加率が最大との報告がございました。ノンリコース・ローン市場の大きく回復しておりますこと影響しております。上半期の投資物件の取引額全体の約21%がアパートへ投資でございました。
物件のネット利回りは、ハーレム以北(125丁目~155丁目)地区にて少々変化が表れてきております。
物件売買利回りが4.5~5.5%に下落しております。但し、金利市場も下落しておりますので、物件のネット利回りが物件担保ローンの金利を上回る市場、20年に一度のような状況は、少なくとも今年前半は継続すると感じております。大手会計士事務所は、アパート物件の価格上昇(利回りの下落。)は来年以降と予測しておりましたが、その予想を覆しすでに始まっております。
* アパート投資物件へのノンリコース・ローンの条件は現在が底値と感じております。【経済情報】にて、その金利の動向を参照いただけます。
<中国から動き>
*ミッドタウン西側地区の開発された高層住宅地区(8・9・10番街) への駐在員中国人居住者
の流入は継続しております。
*上半期に予測されておりました中国政府の大きな通貨切り上げは、ギリシャ危機により曖昧なものになってしまいました。但し、2ヶ月程前に新華社がタイムズ・スクエアーのAクラス・オフィスのペントハウスを賃貸し、北米総支局を設置しましたように、マンハッタンへの個人・法人の流入の動きに鈍化は感じられません。