不動産情報
マンハッタン不動産市場動向(2009年度第2四半期)
【オフィス市場】
*「s.f.」はスクウェーア・フィートの表示でございます。(1坪が約35.58s.f.)
6月の全米の失業率は9.5%に達しました(7月の速報値は9.4%に下落。)、ニューヨーク市も9%に達しました。(詳細は【経済情報】を御参照下さい。)引き続きウォール街のヘッジ・ファンド事業縮小を中心に、年末までに約64,000人の解雇が予測されております。金融関係の雇用者数は、すでに2007年ピーク時の約348,000人から約284,00人へ減少しました。3月に予測されておりました市の失業人数は約270,000でしたが、5月に約254,500人下方修正されて、現時点での失業人数は約107,800人でございます。オフィスの賃貸借市場は第1四半期に25年振りの規模の縮小に陥りました、5月での対前年比較では約42%の下落でございます。マンハッタンの全体オフィス市場の空室率は、現在6月時点にて約10.5%(前年同月:5.6%)まで上昇し、現時点では年内には14%まで上昇すると予測されております。(90年前半の不景気の時、約18%まで上昇いたしました。)
金融関係企業のサブ・リース市場の中心でありますミッド・タウンでの空室率は、約11.7%に達しており、1994年来の数値になっております。
全体の平均募集賃料も現時点にて$60.23/s.f.:約17,000円前後/坪(前年5月:$71.25/s.f.,約21,000円強/坪)昨年より約15.5%の下落の結果となりました。ミッド・タウンでは、$66.82:約19,000円/坪の対前年約20.4%の下落でございます。特に金融関係がテナントでありますクラスAのオフィスへの影響が大きいのが今回の特徴でございますが、クラスBビルにも影響が出始めており、30丁目台のミッドタウン・サウス地区では約$30:約9,000円前後/坪以下の賃貸借契約もあったようです。売買市場は、AIGのような強制的な売り以外は、比較的ビル所有者が持ち堪えており、大量の売りに繋がっていないことが大きなパニックに陥っていないことの要因です。売買市場の取引額は、現時点にて前年同期比にて約4分の1の金額でございます。前回4月に報告いたしましたような、2007年のピーク時からの約60%値引きの取引はその後は聞かれません。
(上記内容は当地大手オフィス仲介業者数社の速報の抜粋でございます。)
【店舗賃貸市場(道路沿いの1階中心)】
マンハッタンの全体平均募集賃料は、昨年の秋以降約11%下落し約$115/s.f.との報告がございました。世界の店舗の中心であるため、市場が下落している間に世界中からのマンハッタン新規進出を考えている会社が動き出しております。
地区別あるいは主要な通り別の募集賃料状況は、以下の通りでございます。
<地区別>*単位は前述のように「s.f.」にて年額表示になります。
- 1.ミッド・タウン:約$152(約-6%)
- 2.アッパー・イースト・サイド:約$168(約-12%)
- 3.アッパー・ウエスト・サイド:約$116(約-22%)
- 4.ミッド・タウン・サウス:約$96(約-14%)
- 5.ダウン・タウン:約$95(約-13%)
- 6.アッパー・マンハッタン:約$52(約-13%)
*最新の8月の情報から、詳細にはタイムズ・スクエアー、ミート・パッキング、ソーホー地区は、年初より約7%下落のとの報告です。
<主要通り別>
1.マジソン街(57丁目~72丁目):約-30%(年初より),(平均募集賃料$829:約24万5千円/月額・坪),72丁目以北は$500:約14万8千/月額・坪と魅了的な賃料になってます。)*8月上旬発表。
2.ブロード・ウェー(アッパー・ウエスト・サイド:72丁目~86丁目):約-5%,($236~$325:約9万6千円/月額・坪)
3.5番街(49丁目~59丁目):約-3%, ($1,200~$2,200:約65万円/月額・坪)
4.5番街(42丁目~49丁目):約-20%,(平均募集賃料$574:約17万/月額・坪)
4.5番街:約0%,14丁目~23丁目($200~$400:約11万8千円/月額・坪)
5.ブロード・ウェー(ソーホー地区):平均値は約0%ですが、最上値は約-32%
($333~$550:約16万3千円)
6.7番街(ウエスト・ビレッジ地区):平均値は約0%ですが、最上値は約-16%
($393~$667:約19万7千円)
【マンハッタンの住宅市場】
売買市場は対前年比較において第1四半期より若干回復の兆候がございました。第2四半期は、対前年比にて中間価格は18.5%、総取引額は50%の下落に留まりました。
新規を含まない中古住宅の売買価格の中間値は、$725,000と対前年比にて約25.6%の下落との結果でした。(新規は契約から残金まで12ヶ月~18ヶ月の期間があるため、適切に市場の動向を反映しないと言われる判断から、現市場動向を考察するには適切な数値と考えられます。)その中身は対前年比にて以下の状況でございます。
コンドミニアム | コープ |
中間価格:$999,000(-21.2%) | $649,000(-14%) |
*間取りの比較ではどのタイプの間取りも下落しており、3ベッド・ルームの3%からワンルームの21%までの下落です。
但し第2四半期は、一昨年の後半に販売された超高級物件の転売価格を含めてますので、適切な市場状況が反映されますのは今年後半と考えられます。
市場にて販売を開始から契約までの必要期間は、18.4ヶ月と10年前の9.9ヶ月に比較しますとほぼ倍の所用期間でございます。
市場の在庫数は、第1四半期の10,445戸から売買の活発なシーズンであります第2四半期には9,378戸まで下落しましたが、対前年同期比ではまだ8.7%高い状況でございます。
価格は$300万以下が中心で、$1,000万以上の住戸の取引は82%下落でした。
売買市場と同様にマンハッタンの住宅市場の70%を占めます賃貸市場の取引件数も、第2四半期に対前年同期比にて約58.3%下落し、在庫件数も約28.8%上昇し7,290件になりました。大きな要素は、マンション等の所有者(投資家を含め。)が借入金返済あるいは市場の下落から、賃貸に切り替えていることが影響していると考えられます。市場での成約までの日数も平均83日の状況です。但し、第2四半期の成約件数の内約46.3%が6月に契約されており、回復の兆候は出てきております。賃料単価も対前年同期での比較では約17.5%の下落ですが、大型住戸の平均は約0.9%上昇の約$3,839の結果になっております。
7月末日に発表されましたS&P Case-Shillerの住宅価格指数によりますと、2007年上期より下落し始めました20都市の住宅価格は、34ヶ月後に初めて下落から上昇になり要約底値についた感がございます。8都市につきまして、5月時点にて上昇に転じております。(3月:1都市,4月:4都市、ニューヨーク地区の一戸建ての価格につきましても、下げ止まりの報告がありました。)特に中古戸建物件の状況につきまして、取引額が4月(+2.4%),5月(+2.4%),6月と3ヶ月連続上昇し、その中間価格も5月(+3.8%),6月と2ヶ月連続上昇に転じております。新築戸建につきましても取引額が5月より上昇に転じ、特に6月は過去8年間での最大の上昇率を記録し、中間価格は4月(+5.2%),5月(+4.2%),6月と3ヶ月連続にて上昇しております。
ニューヨーク市の住宅ローン抵当流れの件数は、第2四半期は対前年同期比にて約7%の下落でした。(第1四半期は約-3%。)5特別区の中、1特別区:クイーンズ特別区だけが未だに約9%の上昇でした。(マンハッタン特別区:約-39%,ブルックリン特別区:-57%)*2009年1月時点では、マンハッタン特別区では対前年同月比:44%下落(146,400戸に1件)、ブルックリンも大幅に下落:73%(対前月:14%下落)、クウィーンズとスタッテン・アイランドはそれぞれ56%と76%増加し、4,559戸に1件、2,845戸に1件の状況でした。
<全米20都市の住宅価格指数下落率Top> <5月に上昇に転じた都市>
*2009年4月時点
- 1.フェニックス 約35% ↓ 1.シカゴ
- 2.ラスベガス 約32.5% ↓ 2.クリーブランド
- 3.サンフランシスコ 約32.4% ↑ 3.サンフランシスコ
- 4.マイアミ 約29.4% 4.ボストン
- *ロサンジェルス 約25.8% 5.デンバー 等
- *サンディエゴ 約24.9%
- *ニューヨーク 約9.6% →
【アパート投資】
アパート物件へのノンリコース・ローンの市場は、その後も徐々に回復しております。(当社7月2件の実績:5年固定金利5.875%~6%、当初2年間は金利のみの支払い、3年目以降元金返済は30年均等、銀行鑑定評価額の75%まで、つまり購入価格の60%まで。)、引き続き買主の中心は、地元の個人投資家、海外個人投資家のようです。第2四半期中に金融市場に連動して底打ちをした可能性があると報告しております大手仲介業会社がございます。
マンハッタンの110丁目以南の地区での2009年上半期の取引件数は、対前年同期比約74%(ピーク時の2007年上半期より約84%下落。)、取引額も約$190,000万(約1,900億円相当)約82%(ピーク時の2007年上半期より約93%下落。)の下落の結果となりました。ネット利回りは、大きな変化はなく4~5%にて取引されております。ハーレム以北の地区の利回りも6.5~7.5%が定着してきており、物件によっては利回りが下がってきている状況もあります。ヘッジ・ファンドあるいはプライベート・ファンドの80%以上のノンリコース・ローン融資パッケージの資金詰まりの話はここ2ヶ月鳴りを潜めております。現金化のため売り急いでいる、あるいはファンド倒産の噂話は金融市場の落ち着きにより、一服しているように感じます。
* 90年代前半からアパート市場を見てきておりますが、物件担保ローンの金利を物件のネット利回りが上回る市場は初めてと考えております。
* アパート投資物件へのノンリコース・ローンは、ほぼ正常な状況を取り戻り、新興銀行も新規にて市場参入してきております。【経済情報】にて、その金利の動向を参照いただけます。
* マンハッタンのアパートの空室率は約3.76%、稼働率は約97%弱でございます。
*特に注意が必要なことは、中国清掃局がバックにいる米国ペーパー会社が、同様のアパートを取得したことです。昨年中国トップ3の銀行の1行、中国商工銀行がマンハッタンでの銀行業務の許可を取得し、本年内に当地にて開業すること、2月下旬にワールド・トレード・センターの再開発のフリーダム・タワー(オフィス・ビル)のトップ3フロアー(約1,500坪)を民間で初めて賃貸借契約をした企業は、中国の民間企業、それも米国への中国企業の進出を斡旋する企業です。(ここ過去2年にてミッド・タウンの日本食レストランのランチは、韓国ビジネスマンから中国ビジネスマンに取って代わられました。)
中国からの投資銀行と中国企業斡旋企業の進出にて益々中国からの駐在員が増える可能性が大きいと感じております。この動向がマンハッタンのオフィス市場と住宅市場に影響する可能性はあると考えております。