不動産情報
マンハッタン2008年度不動産市場動向(2009年予想)
【オフィス市場】
2008年は年頭より厳しい環境でした。2月にベアー・スターンズの倒産、チェース銀行の合併、特に9月以降はリーマン・ブラザーズの倒産に始まり、メリルリンチのバンク・オブ・アメリカによります合併、モルガンスタンレーおよびゴールドマン・サックスの商業銀行化、他の小中規模の商業銀行の倒産・合併、ウォール街の解雇の一年でした。またその投資ファンド組成ビジネスに大きく係わっていた大手弁護士事務所の縮小・合併の影響もあり12月29日の発表のマンハッタンのオフィス市場の空室率は、上記のような業種からのサブ・リーズの大幅な増加により、最終的には約10.9%まで上昇したようです。平均募集賃料も、$74.49と対前年比約3%の下落でございます。特に上記の業種の中心地でございますミッド・タウンは空室率が約11.9%まで上昇し、平均募集賃料は、約$88.81と第3四半期から約4%下落との結果となりました。(昨年末の第三者調査機関の速報より。)来年も引き続きウォール街関係の解雇が進むと考えられますので、大手のオフィス賃貸仲介会社は、空室率は15 % 前後まで上昇すると予想しているようです。(新年1月6日の大手仲介業者の報告によりますと、マンハッタン全体の空室率は約8%、平均募集賃料は$79.81とのことですが、少し数値が少ないように現場として感じております。)
予断ですが、地主側から1年のフリー・レントに内装費の3分の1負担ののようなテナント側にとって好条件の交渉も昨年10月以降顕在化しております。
2008年中のオフィスビルの売買取引は、2005年以降にて一番低い結果になりました。
2007年中の件数:128件(取引合計金額:$386億)から47件($121億)へ約63%の下落となりました。取引単価は、約2年前の2007年前半の$1,000/s.f.($:90円換算、約320万円/坪)ピークから$600/s.f.(約192万円/坪)まで下落したようです。
各大手のオフィス仲介会社は、市場が下落から横這いになるのは、早くても今年の後半か、2010年前半との予測を立てているようです。
【周辺住宅(一戸建)市場とマンハッタンのマンション市場】
2008年の12月31日に発表されましたS&P Case-Shillerの住宅価格指数によりますと20都市の対前年比平均下落率は18%、その内14都市が10%以上の下落率との内容でした。 その中心は西海岸であり、2006年半ばまで異常な上昇をしていた都市と一致しております。
ニューヨーク市周辺含めた地区の一戸建ての価格の下落は、対前年比にて7.5%に収まっておりますが、市場に出してから成約に結び付くまで2年掛かる地区も出てきております。 マンハッタンを中心としたニューヨーク市のマンション市場は、対前年比にて2.5%と緩やかな下落を示しております。2008年第3四半期の平均取引価格は未だに約148万ドルと高いレベルを維持しております。新築物件の売り出し価格は以前平均値にて130万ドルを維持しており、対前年比約5%上昇、第3四半期比約11%上昇でした。但し、建築の許可申請は毎月の対前年比において激減しております。建築許可をすでに取得している開発用地も建設ローンの調達の困難、あるいは市場状況を見極めてからの着工、暫くは更地のままの状況が継続されます開発用地が増加すると考えます。 新築・中古マンションの取引件数は、多きく減少しております。2008年第4四半期の件数は約2,282件、対前年比約25%、第3四半期比約14%下落しております。市場の在庫件数は、過去10年にて3番目に高く、第4四半期は約9,081件と対前年比約39%上昇となりました。
ニューヨーク地区の住宅価格指数を2000年を100としますと、2008年10月時点にて未だに190.04と90%以上の価格上昇を維持しているとの統計が出ていますが、来年は継続して下落すると考えられます。住宅ローンの抵当流れの件数は、第4四半期には州政府の90日間の延長政策があったため、ニューヨーク市において第4半期は合計:764件と第3四半期より約32%減少したようですが、その90日も期限が切れましたので、再度増加に転じる可能性が大きいと思われます。当社によりますマンハッタンの高額物件を取り扱うブローカーからのヒヤリングでは、20~30%の下落はしているとの話があります、大手鑑定士事務所は、2009年第1四半期は平均価格にて少なくとも15%は下落するとの予想をしております。マンション市場は2009年に引き続き調整がおこなわれると考えます。

<全米20都市の住宅価格指数下落率Top>
  • 1.フェニックス 約32.7%
  • 2.ラスベガス 約31.7%
  • 3.サンフランシスコ 約31%
  • 4.マイアミ 約29%
  • *ニューヨーク 約7.5%
【アパート投資】
マンハッタン特別区内では、2008年11月頃より、それ以前との利回りの比較において0.5~1.0%上昇したようです、つまり価格が下落しネット利回り5.5~6.5%の売出し価格にて物件が市場に出てきております。特に2~3年前にプライベート・ファンドが80%以上のノンリコース・ローン融資を受けて、数棟を纏めて購入したパッケージ案件が資金詰まりを背景に売り急ぎの案件も、一部目に付きます。2009年は買主の市場になることは明白です。
現在のマンハッタンの住宅系賃貸用建物の空室率は、2008年第4四半期:1.96%、前年同時期:1.13%でした。平均賃料は間取りによって異なりますが、全体で約4.2%の下落と発表がございました。相変わらずマンハッタンのアパート物件が低い空室率であることは、増え続けている人口との関係では、景気減速の中、企業倒産の可能性が高まり、賃貸リスクが上昇した、他のオフィス・店舗・ホテル等の投資物件より、益々注目を浴びる可能性がございます。