不動産情報
マンハッタン不動産市場動向(2009年度第3四半期)
【オフィス市場】
※「s.f.」はスクウェーア・フィートの表示でございます。(坪:約35.58s.f.、100s.f.:約2.81坪目安です。)
全米失業率は9%台(10月速報:10.2%)、ニューヨーク州の失業率は8.9%と落ち着き始めておりますが、ニューヨーク市は8月に10.2%に達し、9・10月は10.3%と(詳細は【経済情報】を御参照下さい。)引き続きウォール街関係の解雇:約32,000人を中心に貿易・輸送・電気・ガス・法務・会計・製造等と広い分野に広がっております。9月末時点にて過去12ヶ月間に約111,700人の減少、民間雇用者数全体は現在3,123,600人でございます。
オフィスの賃貸借市場の9月末までのデーターは、大手2社にて異なる情報がございました。1社は10月6日時点の発表にて空室率11.1%、もう1社は10月15日の発表に9.3%との結果でした。(前年同月:6.1%の空室率。)前回の景気後退時に12.5%まで上昇しておりますが、現時点では来年には13~14%まで上昇すると予測されております。(90年前半の不景気の時、約18%まで上昇いたしました。) 全体の平均募集賃料も9月末時点にて1社は$57.08/s.f::約17,000円前後/坪、12ヶ月にて21.8%下落、もう1社は$50.78/s.f.:約15,000円前後/坪、前年同期比約28.2%下落、と相違がございました。ミッド・タウンでは、$63.53/s.f.:約18,800円前後/坪と前四半期より約$3の下落と小幅になってきております。ダウンタウンのクラスAビルの募集賃料は、$45.96/s.f.:約12,300円前後にて大きな下落もなく推移しております。取引面積は前年同時期に戻りつつあります。
第3四半期の賃貸借取引面積は約490万s.f.(約137,717坪)と第2四半期より約50%の上昇、サブリース市場の動向もその募集面積が約2.7%下落(約1,110万s.f.募集中。)市場全体に占める割合も5月の5.2%から4.7%に下落、サブリースの募集平均賃料:$49.54/s.f.:約14,700円前後と上述の全体の募集賃料平均との相違が縮小し、 回復への転換点が予測されるような数値が出始めております。
(上記内容は当地大手オフィス仲介業者2社の速報の抜粋でございます。)

【店舗賃貸市場(道路沿いの1階中心)】
ミッドタウンの西側の9番街の賃料は約2年前の約$130から現在$180以上まで上昇しているとの報告がございました。ここ数年の周辺の住宅開発にて中級所得層が移住してきており、その所得に合わせてファースト・フードからレストランに1階店舗が変化している典型的なマンハッタンの地域再開発の現象と考えられます。

マンハッタンの全体平均募集賃料は、昨年の秋以降約11%下落し約$115/s.f.との報告がございました。世界の店舗の中心であるため、市場が下落している間に世界中からのマンハッタン新規進出を考えている会社が動き出しております。 地区別あるいは主要な通り別の募集賃料状況は、以下の通りでございます。
<地区別>*単位は前述のように「s.f.」にて年額表示になります。
  • 1.ミッド・タウン:約$152(約-6%)
  • 2.アッパー・イースト・サイド:約$168(約-12%)
  • 3.アッパー・ウエスト・サイド:約$116(約-22%)
  • 4.ミッド・タウン・サウス:約$96(約-14%)
  • 5.ダウン・タウン:約$95(約-13%)
  • 6.アッパー・マンハッタン:約$52(約-13%)
*最新の8月の情報から、詳細にはタイムズ・スクエアー、ミート・パッキング、ソーホー地区は、年初より約7%下落のとの報告です。
<主要通り別>
1.マジソン街(57丁目~72丁目):約-30%(年初より),(平均募集賃料$829:約24万5千円/月額・坪),72丁目以北は$500:約14万8千/月額・坪と魅了的な賃料になってます。)*8月上旬発表。
2.ブロード・ウェー(アッパー・ウエスト・サイド:72丁目~86丁目):約-5%,($236~$325:約9万6千円/月額・坪)
3.5番街(49丁目~59丁目):約-3%, ($1,200~$2,200:約65万円/月額・坪)
4.5番街(42丁目~49丁目):約-20%,(平均募集賃料$574:約17万/月額・坪)
4.5番街:約0%,14丁目~23丁目($200~$400:約11万8千円/月額・坪)
5.ブロード・ウェー(ソーホー地区):平均値は約0%ですが、最上値は約-32%
  ($333~$550:約16万3千円)
6.7番街(ウエスト・ビレッジ地区):平均値は約0%ですが、最上値は約-16%
  ($393~$667:約19万7千円)

【マンハッタンの住宅市場】
第3四半期は第2四半期から取引件数が大きく回復いたしまた。この間に約35%上昇、件数にして9,734件の増加でした。但し、対前年比ではまだ20%の下落です。特に大きく増加しましたのは2特別区です、Brooklynが対前期比:約29.4%、Queensが約31%の増加でした。但し、対前年比ではそれぞれ約19.6%(1,847件)、約13.9%(2,789件)の下落の状況でした。取引価格は市全体では対前年比にて14%の下落、住宅全体の平均価格は$670,000でしたが、対前期比にて約4%の上昇でした。Manhattan特別区の平均住宅価格は、超高級物件の停滞も続いており、第2四半期より約5%の下落にて約$1,200,000でした。 (Manhattan内のコンドミニアムは対前期比にて約5%の下落、約$1,500,000でした。)
注目すべきは、過去数年間に供給過剰であったBrooklyn特別区の平均価格が、第2四半期より約6%上昇して約534,000になったことは、7四半期振りのことであり一つのシグナルではないかと言われてます。
<市内タイプ別平均価格:対前期比>
コンドミニアムコープ(株券所有)タウンハウス
約$1,100,000(+1%)約591,000(+8%)約534,000(+6%)
<分譲住戸の中間価格:対前期比と在庫戸数:対前年>
Brooklyn特別区Queens特別区
約$476,000(+7.9%)約362,000(0%)
5,600戸(‐21.1%)9,797戸(‐13.9%)
*第3四半期での上述の2特別区の対前年比での大幅な減少は、ニューヨーク市の分譲住宅市場の底打ちが近いことを示唆しているとも考えられています。

マンハッタンの住宅市場の70%を占めます賃貸市場は売買市場の一次取得者の回復とは裏腹に第3四半期も引き続き厳しい状況でした。成約件数は対前年比にて約58.9%の下落にて、中間賃料価格も対前年比にて約7.7%下落の月額約$2,950との結果となりました。
地主側の大幅な譲歩(敷金減額・無料賃料期間等)にも拘らずの状況です。成約に至ります期間も以前2ヶ月以上(約77日平均)にて、対前年比の50日との差は埋まっておりません。在庫件数も売買市場にて消化されません住戸が賃貸市場に流れており、第3四半期期間中に5.4%の上昇、件数にて6,527戸でした。
但し、昨年のリーマン・ショック以降賃貸市場は大きな影響を受けると考えられておりましたが、マンハッタン全体の賃貸住宅の空室率は昨年の同時期の1.4%から1年間にて1.8%に上昇しただけでした。来年の国税調査では市の人口は10年間に50万人(2000年に市の史上初めて800万人越えを記録しました。)の増加が予測されてますが、その急速な人口流入が低い空室率を持続させている可能性はあると言えます。

S&P Case-Shiller Index(全米住宅市場の45%を含む。)の住宅価格指数によりますと、2007年上期より下落し始めました20都市の住宅価格は、5月時点より34ヶ月後に初めて下落幅が縮小に転じており、6月もその状況は徐々にではございますが好転しおり、指数の下落が更に進行している都市はGMの倒産の影響が大きいデトロイトのみの状況でした。 9月の速報によりますと、その指数はニューヨーク等の大都市でのタイム・ラグ的な 小幅な下落があったようですが、指数全体としては+0.3%(季節調整後)の上昇とのことです。特に8月は回復が強く、1.1%の上昇、僅か4都市のみが下落を示す状況でした。

また、S&P Case-Shiller National Home Price Index(全米住宅市場の75%を含む。)の第3四半期の速報につきましては、以下のように対前年同四半期比では大幅な改善の結果が発表されました。(第2四半期から+3.1%上昇、季節調整後にて+1.9%の上昇でした。)

第1四半期第2四半期第3四半期
‐19.1%‐14.7%‐8.9%
10月の既存戸建ての取引件数は、対前月比+10.1%の大幅な上昇を見せ、ここ過去2年間では最高の伸び率でした。新築につきましても、10月の取引件数は対前月比にて+6.2%の 大幅な改善をしめしており、その中間価格も9月:+2.4%に引き続き+0.7%と2ヶ月連続にて上昇して$21万ドルを越えております。
<全米20都市の住宅価格指数下落率Top><5月に上昇に転じた都市>
*2009年4月時点6月時点
フェニックス約35% ↓約31.6% ↓1.シカゴ 約16.7% ↓
2.ラスベガス約32.5% ↓約32.4%2.クリーブランド 約3%
3.サンフランシスコ約32.4%  ↑約22% ↓3.ボストン 約5.9% ↓
4.マイアミ約29.4%約23.4% ↓4.デンバー 約3.6% ↓
*ロサンジェルス約25.8%約17.8% ↓
*サンディエゴ約24.9%約16% ↓
*デトロイト約25% ↑
*アトランタ約13.7% ↓
*シアトル約16.1% ↓
*ワシントンDC約11.8% ↓
*ニューヨーク約9.6% →約11.9% ↑
ニューヨーク市の住宅ローン抵当流れの件数は、第2四半期は対前年同期比にて約7%の下落でした。(第1四半期は約-3%。)5特別区の中、1特別区:クイーンズ特別区だけが未だに約9%の上昇でした。(マンハッタン特別区:約-39%,ブルックリン特別区:-57%)*2009年1月時点では、マンハッタン特別区では対前年同月比:44%下落(146,400戸に1件)、ブルックリンも大幅に下落:73%(対前月:14%下落)、クウィーンズとスタッテン・アイランドはそれぞれ56%と76%増加し、4,559戸に1件、2,845戸に1件の状況でした。
【アパート投資】
第3四半期、10月も越えて取引はゆっくりと徐々に回復始めております。主な投資家は 米国・海外を含めてプライベートの投資家です。個人の資産家あるいはプライベート・ファンドも含まれるようです。過剰な融資を受けているファンドが分配金の捻出を含め売り急いでいる物件(10億前後、前半は数物件一括のパッケージでした。)が市場に個別売却にて売り出されおります。それを上記の投資家が価格交渉をして購入している状況でございます。注目すべき点は、世界中での米ドル安効果が夏以降出始めていることです。特にイスラエルの通貨(ニューシュケル)が20年振りの対米ドル高になり、夏以降大量な資金が米ドルに転換されて流入してきているとのことです。当然金融市場を中心にアパート投資への動きもございます。先日内見をした約9億(90戸)のアパートの現地では、ヘブライ語の年配2人組と現地ですれ違うことがあり、過去にはアメリカ・ユダヤ人とは良く内見ですれ違うことはございましたが、このようなことは15年の中で始めてのことです。 アパート物件へのノンリコース・ローンの市場は、その後も大きな変化もなく回復しております。(当社7月2件の実績:5年固定金利5.875%~6%、当初2年間は金利のみの支払い、3年目以降元金返済は30年均等、銀行鑑定評価額の75%まで、つまり購入価格の60%まで。)、上記の大型アパート物件への融資には、現在米国政府が買い取りましたファニー・メイ(債権保証会社)の保証付きのノンリコース・ローン(但し、5年固定:4.95%、但し中途解約不可。)が可能です。 マンハッタンの東は96丁目以南、西は110丁目以南の地区での第3四半期の不動産取引件数:76件は、第2四半期:44件に比べまして約73%(第1四半期:50件)と上昇しました。取引額も第3四半期:約$12億5,261万(約1,127億円相当)と第2四半期:約$3億3,882万(約305億円相当)より約270%の上昇の結果となりました。第1四半期~3四半期までの全体の取引件数:207件、取引額は約$31億7,777万(約2,860億円相当)、取引額内の約56%がオフィスであり、アパートは16%でした。中間単価での2007年のピーク時からの下落比較では、オフィスが約62%、アパートは16%の下落でした。ネット利回りは、大きな変化はなくハーレム以北の地区の利回りも6.5~7.5%にて推移しております。
* 90年代前半からアパート市場を見てきておりますが、物件担保ローンの金利を物件のネット利回りが上回る市場は初めてと言えます。
* アパート投資物件へのノンリコース・ローンの条件は現在が底値と感じております。【経済情報】にて、その金利の動向を参照いただけます。
* マンハッタンのアパートの空室率は、第3四半期では約1.8%、(対前年:1.4%)との発表がございます。第2四半期にて掲載いたしました数値は、「マンハッタン」では無く「ニューヨーク」、つまりマンハッタン特別区を含めた5特別区全体とここに訂正させていただきます。御迷惑をお掛けいたしましたこと深く御詫び申し上げます。

<中国から動き>
*特に注意が必要なことは、中国清掃局がバックにいる米国ペーパー会社が、同様のアパートを取得したことです。昨年中国トップ3の銀行の1行、中国商工銀行がマンハッタンでの銀行業務の許可を取得し、本年内に当地にて開業すること、2月下旬にワールド・トレード・センターの再開発のフリーダム・タワー(オフィス・ビル)のトップ3フロアー(約1,500坪)を民間で初めて賃貸借契約をした企業は、中国の民間企業、それも米国への中国企業の進出を斡旋する企業です。(ここ過去2年にてミッド・タウンの日本食レストランのランチは、韓国ビジネスマンから中国ビジネスマンに取って代わられました。)中国からの投資銀行と中国企業斡旋企業の進出にて益々中国からの駐在員が増える可能性が大きいと感じております。この動向がマンハッタンのオフィス市場と住宅市場に影響する可能性はあると考えております。
* ミッド・タウンの中心の2店舗の和食レストランに聞き込みをしておりますが、益々今までの見たことがない雰囲気の中国人ビジネス関係者が、最近更に多くなっているとの見解でした。
更にミッド・タウンの西側のここ過去数年のバブル期に開発された高層住宅地区(8・9・10番街) にも中国人の居住者が週末に見られるようになりました。


マンハッタン不動産市場動向(2009年度第2四半期)(アーカイブ)
マンハッタン不動産市場動向(2009年度第1四半期と2009年予想)(アーカイブ)
マンハッタン2008年度不動産市場動向(2009年予想)(アーカイブ)