不動産情報
マンハッタン不動産市場動向(2009年度第1四半期と2009年予想)
【オフィス市場】
2009年も市の失業率が8%を超えたことが示していますように、引き続きウォール街の事業縮小を中心に、その投資ファンド組成ビジネスに大きく係わっていた大手弁護士事務所の閉鎖・縮小の影響もあり、特にサブ・リース面積の大きく増加しております。マンハッタン特別区の内の空室面積は、速報値にて約30,000,000s.f.(約843,000坪:50階建てのオフィス約28棟分。)でございます。その内の3分の1をサブーリースが占めております。マンハッタンの全体オフィス市場の空室率は、現在約8.5%(前年同月:5.5%)まで上昇し、現時点では年内には14%まで上昇すると予測されております。(90年前半の不景気の時、約18%まで上昇いたしました。)全体の平均募集賃料も、$57.35と昨年より約19%の下落の結果となりました。特に上記の業種がテナントでありますクラスAのオフィスへの影響が大きいのが今回の特徴でございます。このクラスの空室率は1年で66%も上昇し、現在の速報値にて約11.9%まで上昇したと報告されてます。平均募集賃料もクラスAビルにて約$74.88(約11%下落)、クラスBビルにて約$49(約12%下落)と報告されております。また、その中心地でございますミッド・タウンは空室率が約13.5%まで上昇し、平均募集賃料は、1年間に約23%下落したようです。第1四半期の3ヶ月間にマンハッタン全体の平均募集賃料が約6%も下落したましたのは、25年振りの結果となりました。募集賃料の下落は、引き続き2010年第1四半期まで継続しすると予測されてます。但し、今回の市場の下落の特徴としましては、90年代に前半に経験しました80年代後半の開発による供給過剰と景気減速が重なった状況ではないと考えられることです。供給量は自社ビル開発を中心に2000年以降、変化していないことが救いではございます。(上記内容は当地大手オフィス仲介業者数社の速報より抜粋いたしました。)
実際の契約賃料は、地主側の募集賃料からフリー・レントあるいは内装費負担等を合わせますと約30%ディスカウントの好条件の交渉も顕在化しております。
結果になりました。
売買事例の話題は、タイムズ・スクエアー地区の中心に所在しますクラスAビルの取引です。単価比較といたしまして、約2年前の2007年前半の$907/s.f.($:100円換算、 約322万円/坪)ピーク取得の物件を$335/s.f.(約119万円/坪)で購入した投資家グループがございます。
【マンハッタンのマンション市場と周辺住宅(一戸建)市場】
新築・中古マンションの取引件数は、2009年第1四半期に対前年同期比にて約51%下落し、在庫件数も約34%上昇し、2008年第4四半期の9,081件から10,445件になりました。特に新規プロジェクトの取引の下落は激しく約67%に達したようです。今回の四半期の下落は、1994年第4四半期以来の結果になりました。価格の下落は新規と超高級物件に顕著に現れており30~40%前後の下落、取引件数は大幅に約87%の下落との速報がございます。特に1,000万ドル以上の物件では45%程の値下げにて契約された事例も出てきており、2,000万ドル以上の取引は皆無となりました。過去数年に渡り歴史的記録を塗り替えれきましたコンドミニアムの取引平均価格もこの四半期に対前年同期比約10%下落の約116万ドルとのニューヨーク市不動産協会の速報がございました。
2009年の1月31日に発表されましたS&P Case-Shillerの住宅価格指数によりますと20都市の対前年比平均下落率は2008年12月の18%に引き続き19%となり、2000年以降の記録となりました。
その中心は西海岸であり、2006年半ばまで異常な上昇をしていた都市と一致しております。
ニューヨーク市周辺含めた地区の一戸建ての価格の下落は、対前年比にて9.6%にとなり、弱間広がりました。ニューヨーク地区の住宅価格指数を2000年を100としますと2008年10月時点にて未だに190.04と90%以上の価格上昇を維持しているとの統計が出ています。
住宅ローンの抵当流れの件数は、2009年1月時点では、マンハッタン特別区では対前年同月比:44%下落(146,400戸に1件)、ブルックリンも大幅に下落:73%(対前月:14%下落)、クウィーンズとスタッテン・アイランドはそれぞれ56%と76%増加し、4,559戸に1件、2,845戸に1件の状況です。
<全米20都市の住宅価格指数下落率Top>
  • 1.フェニックス     約35%
  • 2.ラスベガス      約32.5%
  • 3.サンフランシスコ   約32.4%
  • 4.マイアミ       約29.4%
  • *ロサンジェルス    約25.8%
  • *サンディエゴ     約24.9%
  • *ニューヨーク     約9.6%
【アパート投資】
2008年通しての取引件数は、対前年比約37%の下落、特に下半期は約45%との結果になりました。地区別ではブロンクス地区が最も激しく60%(機関投資家がこの地区に投資を始めたのが約6年前)マンハッタン地区:約54%、クウィーンズ・ブルクッリン地区はそれぞれ約38%の下落でした。過去の景気後退期との比較では、1989~1990年には約29%、1998~1999年には約33%でした。売買物件の利回りは2009年に入りましても、特に投資家の動きが鈍化する冬の時期も重なったこともあり、さらに上昇し利回り6.5~7.5%の価格に売主が譲歩する物件が市場に出てきております。特に2~3年前にプライベート・ファンドが80%以上のノンリコース・ローン融資を受けて、数棟を纏めて購入したパッケージ案件が資金詰まりを背景に現金化のため売り急いで案件には顕著です。【経済情報】で説明しております金融機関のノンリコース・ローンの動きからも買主主導の絶好の市場が到来していると考えます。
*90年代前半からアパート市場を見てきておりますが、物件担保ローンの金利を物件のネット利回りが上回る市場は初めてと考えております。
*アパートの空室率は2008年第4四半期から約1.1%上昇したようですが、ウォール街に関係する高級賃貸物件に顕著に現われていると考えております。